演出雑記03
2025.10.12

一寸法師と中村薫平



2場は父竹造の一寸法師のシーンがメインになる。
このシーンは子供にも観てもらい、感想を何度か聞いた。私自身も家で子供に読み聞かせをし、話し合いを重ねた。
この一寸法師は中村君にとって大きな山場であったし、本当に本当に苦しかったことであろう。
どうがんばったって、演劇初心者である中村君の実力不足なのはもう決定的で、私もここは覚悟を決めて挑んだ。

台本をわたしてから約6か月の歳月を要したが、千秋楽まで中村君の挑戦は終わらなかった。
でもこのシーンを納得して芝居できる役者っているの?いないよね!?
そう思うと、最後まで挑戦挑戦だ。
中村君は真面目で不器用な青年で、体力が異常にあるという長所を除けば、俳優としては苦労の多いタイプだろう。

詳しくは書かないが、彼は本当に辛かったと思うし、耐えに耐えた稽古場だった
しかし中村君は、この「父と暮せば」の竹造という大役を大きなプレッシャーの中、3日間に8ステージという驚異的な経験をしてしまった。
それは彼の俳優としての経験値を数年分一気に積み上げたに等しいのではないかと思う!

彼がこの先どんな道を歩んでいくのかは分からないけれど、今はこの偉業を成し遂げた一寸法師に、鬼演出家から心からの拍手を送りたい。

#小菅かおり
#ドラマシアター