演出雑記02
2025.10.10
第一幕
ゴーストハウスと饅頭とモナリザ

雷の轟から始まるこの舞台は、最初ゴーストハウスから始めることにした。
家は散らかり、壊れたラジオが鳴り響く
雨に濡れて帰ってきた美津江は家の様子がおかしくて恐ろしくなる
物語は美津江のクライマックスから始まるのだ
「おとったんこわーい」
私は大体芝居を作るときには、オープニングシーンは物語のクライマックスとして芝居をつくっている、このシーンも当然。
「父と暮せば」のクライマックスシーンとしてど頭からぶっ放す叫びとなった。
嵐のシーンの後は、美津江の台所仕事のシーンになる。
いつもだったら消え物(食べ物)にこだわる私でありますが、ずっしりしている饅頭を手に入れる事が出来ずに、今回はアンパンで代用した。
アンパンが出てくるたびに客席で恥ずかしいなと、実は思ったのだが、予算の問題もあり仕方がなかった。お客さんもわかってくれるだろうと願った。
一幕ではとにかく、コミカルな父親、美津江の生活感が伝わるようにテンポよく芝居を作った。
ドラマシアターはエンタメだねとよく言われるが、私もその自覚は十分にある。
音楽を使い、言葉を利用して体を動かす。
そもそも私がやりたかった演劇はこういう演劇ではなかったのだけれど、長年培った経験が、こういった芝居でやっていこうという私なりの答えなのだ。
一場のラストは、ラジオから流れる「モナ・リザ」に合わせて、竹造がうたって踊る。美津江の孤独な日常に突如現れた竹造が、美津江に優しい嘘をつく。
